左右にスライドする階段?はしご?

ここでは、「左右にスライドする階段?はしご?」 に関する記事を紹介しています。
先日、試行錯誤のあげく、無事完了した現場のエピソードです。
(記事後半から写真をまとめて載せています)

とある会社さんが、半屋外の倉庫内に木造で棚を作りたいとのことで、
サイズは横幅が約6m、奥行きが1.3m、高さが2.5mで、窓を避けて
間に棚を一段、とのご希望でした。

棚作りなら得意中の得意。サイズをご希望通りに作れるのも、
置かれる物の荷重を考慮した造りにするのも、大工工事で作ればこそと、
張り切って打ち合わせに臨みました。

しかし、担当者さんから、ひとつ頭を悩ませる課題が与えられたのです。

それは、

一番上の棚へ物を揚げ降ろしするのに、はしごか、はしごよりは
急じゃない、階段のようなものが欲しい。しかも、その階段は
左右にスライドさせて好きな位置で使いたい、とのことでした。

はしご、いえ、階段状のものも、場所さえ許せば、踏み段の奥行きも
高さも、つまり、サイズも勾配もお望み通りに作ることはできます。

ただ、左右にスライドさせるというのは…
しかも、可動にするといっても、昇り降りの時だけは動かないように
する工夫は必要です。

例えば、飛行機のタラップのように、階段に何箇所か脚をつけ、
階段だけでも自立するようにし、それにキャスターをつける方法も
考えましたが、それだと場所をとるので、やはり『はしご』的な
使い方ができるものにしようということになりました。

とにもかくにも、見積もりをしないことには前に進まないので、
まずは、材料出しのために階段の形状の検討です。

ご希望の場所に置けるサイズで、しかも、勾配が急にならず、
踏み段も大人の男性が靴のまま上がり下りされるのに
不自由のないように寸法を割り出すことにしました。


まずは勾配の検討です。

一般の家庭内で使われるはしごに、屋根裏収納やロフト用のはしごが
ありますが、その勾配を見てみると約62~66度でした。

はしごにつかまりながら昇り降りするならば、これでも良さそうですが、
物を持ったままでは少し不便そう。

ということで、建築基準法上で住宅の階段としては上限の、
55度にすることにしました。(手すり付きという条件あり)

実際に、この勾配の階段で日常生活をされている家があるのなら、
倉庫ではしごがわりに使う階段としてなら何とか使えるのではないかと
思ったのです。

階段に載ったまま何かの作業をするなら手すりも必要かと思いましたが、
物の揚げおろしにしか使わないし、下手に簡単な手すりをつけると、
それをアテにしてかえって危ないという意見も出て、手すりもなしに
しました。

あとは、勾配にあわせて踏面の奥行きと高さ、そして、踏面の
上の段との重なり幅を決めます。
それぞれ、240mm、250mm、60mmとしました。

(これは、工事前に、二段だけの実物大サンプルを造り、
 お客様に勾配の感じを確認して頂きました)

次は、一番肝心な部分、棚の縁に掛ける部分と、床に接する部分を
どうするかです。

正直、この手の階段を作ったことはあっても、『可動にする』というのは
私たちには初めての試みでした。

そこで、お客様にもそのようにお伝えし、担当者さんも交えた
可動階段のアイデア大会?となったのです。

そして、ご相談の結果、床に接する部分にはキャスターをつけ、
上部は現場で動かしてみてキャスターをつけるかどうか検討する
ことになりました。

さて、現場に入ると棚の造作は着々と進み、いよいよ階段作りです。

まずは、階段がとりあえず完成したところです。
高さ関係のチェックのため、キャスターはつけずに、置いてみました。
kaidan01
(※各写真はクリックで拡大)


上部はこのようになっています。
材料は、半屋外の倉庫内で土足で利用すること、予算のこともあり、
当初から杉の足場板でと考えていました。

板の幅を必要最小限度にとってあるので、引っ掛ける部分の形状と
寸法は結構考えました。
(形状はお客様のアイデアも多分に頂きました♪)
kaidan02


キャスターをつけない場合のことも考えて、棚の縁につけた階段のずれ止めの
角材は表面を斜めに落とし、階段の上部、傘の柄のように曲がった先端は
棚の表面に擦らないように少し短くしています。

また、階段の上部も左右に開かないように補強してあるのが、
裏から見るとわかりますね。
kaidan03


表側から見ると、こんな感じです。
kaidan04


次は、足元にキャスターを取り付けます。
キャスターを留めるボルトが太くて長いので、板を二重にして補強しました。
kaidan05


キャスターを取り付ける位置ですが、人が壁に斜めによりかかった時は、
かかとに体重がかかるのでは?ということで、少し端につけました。

階段を立ててみるとこんな感じです。
kaidan06

(なんか、イナバウアって感じ♪)

ここで早速、階段を棚に立てかけ、試しにスライドしてみると…


階段の総重量は、50キロはあるかと思いますが、ぎこちない動きながら、
一人で押しても一応は動かすことができました。

そこで、夫のアイデアで、上部の先端、補強のために
板を渡した部分の裏に、円形の『カグスベール』を貼りました。

ふたたび押してみると、前よりは動きがだいぶましです。
このまま使えないことはないのですが、お客様に見ていただくと、
上部にもキャスターをつけたほうが良いかも、となりました。

そこで、上部のどこにキャスターをつけるかで、また、
担当者さんを交えてのアイデア検討会。

結果、このような形に取り付けてみることとなりました。
kaidan07


つまり、棚の縁につけた角材の上を走らせようという作戦です。
(これはお客様のアイデア♪)
一見、角材を飛び越えた奥につければ?と思われますが、
ここにつけるとキャスターにずれ留めの役割をさせることになり
危険だというので辞めました。

そして、このように、ある程度角度を持たせてキャスターをつけよう
というのが夫のアイデアでした。
kaidan08


キャスターをここに取り付けることで、杉板に部分的に力が加わり
割れないようにと、木目を直行させるように表面に同じ材料で
補強をしています。(なんかコッテコテですが…)

もちろん、反対側もこのとおり。
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さて、今度はどうでしょう…
恐る恐る階段を動かしてみると…


『スイ~ッ』

なんとも、スムーズに動くではありませんか!

思わず、私はお客様のお顔を見て、

「やりましたね!」

そして、動かすことが最終目的ではなく、安全に昇り降りするのが、
本来の目的…と、試しに階段を登ってみました。

上部にキャスターをつける前よりもやはり左右に振る感じです。

そこで、ストッパーを考えました。
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これを、このように、キャスターとキャスターの間へセット。
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この、キャスターに当たる部分の角度がポイントです。
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(左上の四角い穴は持ち手です…夫なりの気配り♪)

これで、すべて完成!
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それにしても、あまりにも階段が滑らかにスライドするので、
すっかり嬉しくなり、担当者さんに、

「これ、『Fシステム』として、売りだしてください!」
 (Fは担当者さんのイニシャルです)

「ええ、他の会社の方が見られて『いいね』って
 言ってくださったら、また宣伝しておきますよ。」

と笑ってくださいました。

今回のご担当者のFさんは、ご自身も社内の書棚などを手作りされており、
アイデア豊富なお方。私たちの初めての試みに、いろいろな協力を
して下さり、ご一緒にアイデアを形にできたということは、
何より嬉しい想い出となりました。

今後また、ボルトの緩みや滑り止めの角材が摩耗しないかなど、
様子を見に伺うことで、お付き合いは続くと思いますが、
末永く安全にご活用頂ければと思います。

現場からの帰りの車内で、夫に

「キャスターで動かすしくみ、どうなることかと思ったけど、
 Fさんのおかげもあって、予想以上にいいものができたね。」と言うと、

「俺らがいつも要求されることと真逆やったからなあ。
 建築っていかに動かないようにするかやろ。

 落ちないように、はずれないように、めくれないように…」

「ほんまやなあ!」

ところで…

翌日、Fさんから電話がありました。

(あれから何か、問題でも…!?)

ドキドキしながら電話に出ると、Fさん、

「棚に塗装しました!午前中で塗れましたよ。柱とかだけですけど。
 なんか高級感が出ました♪」

Fさん、本当にどうもありがとうございました~。

さて、今日の記事は…
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